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試写室・劇場から

百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~

5月9日(土)からTOHOシネマズ二条で公開

©2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

江戸の下町を舞台に、元気印ヒロインの光と影を描く

40代で世を去った杉浦日向子のファンは多い。彼女は漫画家としての筆を断った後、江戸風俗研究家としての仕事もした。そんな彼女の若きころの代表作を「河童のクゥと夏休み」が印象的だった原恵一監督がアニメーションとして映画化。現代にも通じるスピリットがあちこちで顔を出し、大いに共感をさそう仕上がりとなっている。

ヒロインのお栄は、23歳の浮世絵師。父であり師匠は、かの有名な葛飾北斎である。二人の仕事場は、お調子者で女好きの弟子や、門下は違うが北斎を尊敬している絵師のたまり場で、にぎやかな空気に包まれている。父の代筆をするほどの腕を持つお栄の、創作上の悩み、淡い恋、家族への思いなどが、美しい季節の移ろいとともにつづられていく。

お栄と北斎の距離感が何ともいえずイイ感じ。杉浦日向子の原画と比べ、眉毛太めのお栄は江戸調とは思えないが、気の強さと優しさを併せ持つ人柄が魅力的だ。おどろおどろしい妖怪騒ぎのエピソードや、両国橋からのスケール感のあるビジュアルも楽しい。江戸時代を生きた庶民の女性が、喜怒哀楽いずれかの感情を抱きつつながめていた空の色。そういうものを想像させる力が、この映画には確かにあるなと思った。声の出演は、杏、松重豊ほか。

(ライター 宮田彩未 

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