砂漠の青がとける夜
中村理聖 集英社・1296円
1人の少年が教えてくれた、「言葉」のはかなさと美しさ
本書は親から譲り受けたカフェを京都で営む、それぞれにつらい過去を持つ2人の姉妹の物語。
毎日同じ繰り返しの日常の中で、世界を旅してきた先生、人の言葉の中に異なる世界が見える力を持つ中学生と出会い、少しずつ変わっていく2人の姿が、京都の四季の移ろいと共に美しく描かれています。
普段、人が使う「言葉」は必ずしもその人の気持ちや感情を正確に相手に伝えられるとは限りません。相手の状況でいくらでも変化する「言葉」の持つ曖昧さ、強さや弱さ、はかなさが本書の随所からあふれ出ていました。作者の紡ぎ出すみずみずしい「言葉」を、コーヒーを飲みながらぜひ味わってもらいたいと思います。
【紹介者】
ことばのはおと 中村仁さん
ことばのはおと 中村仁さん
()