細雪
4月26日(日)まで、大阪新歌舞伎座にて公演中
花の季節に堪能したい、谷崎文学の耽美な昭和絵巻。
谷崎潤一郎没後50年に当たる今年、代表作といわれる「細雪」の登場人物の構想などが記された創作ノートが発見され、話題を呼んでいる。4月の新歌舞伎座は、その「細雪」を上演中だ。
徳川時代からの木綿問屋の老舗・蒔岡商店の四姉妹を中心に、あでやかに、典雅に描かれていく舞台は、まさに“昭和絵巻”の世界そのもの。本家の誇りと格式を重んじる長女・鶴子(高橋惠子)、格式にとらわれず、妹たちのいい相談相手の次女・幸子(賀来千賀子)、控えめで年頃を過ぎかけている三女・雪子(水野真紀)、新しい女性の生き方を求める四女・妙子(大和悠河)の四人の姉妹は、戦争を目前にして、関西の上流社会の滅びゆく現実に戸惑いながらも、それぞれの運命に向かい合い、しなやかに生きていく。
極めつけの女優陣、ため息の出そうな豪華な衣装、大阪の老舗の由緒ある家の造り、レトロ・モダンな芦屋の邸宅などの舞台美術…と、どれもが見事に整い、じっくりと耽(たん)美な谷崎文学に酔うことができる。また、磯部勉、葛山信吾、太川陽介、川㟢麻世、橋爪淳などの、確かな演技力をもつ男優陣の存在が、物語に彩りと奥行きを与えているのも、見事である。
花の季節にふさわしいぜいたくな舞台を堪能した。
(文筆業 あさかよしこ )