宇治を拠点に活動した画家・水原房次郎さん。没後約30年の時を経て、昨年秋、私設美術館が誕生しました。秋季と春季の年に2回、開館。蔵を利用した、趣のある空間です。
27歳から亡くなるまでの約50年間を、宇治市神明に構えたアトリエで過ごした水原房次郎さん。国内外へ取材旅行に出かけて制作した油絵を紹介するのが「水原房次郎 蔵美術館」です。
「父が残した作品を1人でも多くの人に見てもらいたい」と長男・水原琢秀さんと長女・三代沢史子さんが美術館開設を企画。水原家と古くから付き合いがあった、製茶業を営んでいた藤川さんから場所を提供してもらえることになり、実現することになったのだそう。
その場所というのが、宇治市白川にある建物。門をくぐり、庭を通って奥へ進むと、左手に美術館として生まれ変わった蔵があります。
中は2階建てで、戦後間もない宇治の風景や旅先で作者が“美しい”と感じた景色など、常時20点の作品が展示されています。
入ってすぐに目を引くのが、高さが160センチほどの2つの大きな作品。ステンドグラスをモチーフにして描かれたものなのだとか。色彩豊かに力強く表現されており、記者も思わず見入ってしまいました。
それにしても、蔵が美術館に変身するとは驚きです。
「築300年の蔵の壁や柱はそのまま生かし、床と照明のみをリフォームしました。藤川さんには蔵の中に保存されていた荷物を片付けるところから始めていただき、掃除をするなど、準備期間は構想から約1年かかりました」と琢秀さん。
開館期間中は、主に琢秀さんが美術館に常駐。
「絵の搬入、搬出も自分たちで行います。体力が許す限り、この美術館を続けていきたい。白川地域の活性化につながればうれしいですね」と琢秀さんは話します。
父・水原房次郎さんの海外取材旅行に同行したこともあるという琢秀さん。今年の春期展では、約1カ月間のメキシコ滞在中に描かれた琢秀さんお気に入りの一枚も展示される予定です。