三月花形歌舞伎
3月27日(金)まで京都・南座にて公演中
エールを送りたくなる、若手花形たちの気迫!
円熟味と洗練されたベテランの芸を堪能することが、歌舞伎鑑賞の醍醐味(だいごみ)なのだけれども、多くの未知数と可能性を秘めた、若手俳優たちの青い気迫に満ちた舞台も、なかなかいいものである。今月の南座は「三月花形歌舞伎」。先日他界した坂東三津五郎の長男・坂東巳之助、テレビ出演も多い尾上松也をはじめ、中村歌昇、尾上右近、中村種之助、中村米吉、中村隼人という7人の若手を中心にしたすがすがしい舞台である。
午前の部は、歌舞伎十八番のうち「矢の根」と「鳴神」。そして織女と牽牛(けんぎゅう)にまつわるコミカルな舞踊「流星」。午後の部の最初の演目は「弁天娘女男白浪」。生娘に化けて呉服屋で悪さをし、見とがめられると「知らざあ言って聞かせやしょう!」とタンカを切る、ご存じ、弁天小僧菊之助をはじめ、若くイナセなワルのグループ“白浪五人男”の潔い晴れ姿。そして最後は、妖怪変化が乱舞する「闇梅百物語」。
どれもみずみずしく心地よい舞台だが、中でも巳之助の、声の力強さと、口跡の美しさが際立っていた。舞台に勢ぞろいした7人に、思わず「これからの歌舞伎を任せたよッ!」とエールを送りたくなる、頼もしい舞台になっている。イヤホンガイドを利用すると、さらにわかりやすく楽しむことができる。
(文筆業 あさかよしこ )