くりかえすけど
田中小実昌 幻戯書房・3456円
戦時中のこと、役者との出会い…〝コミさん〟自身の体験を描く小説
コミさんこと、田中小実昌さんの文章は、不思議です。おしゃべりしているようで、ひとつのことを話していたかと思うと、あっちへ飛び、こっちへ飛び。事実ともフィクションともつかない、お話の数々。
第2次世界大戦中に兵隊として体験したこと。復員して米軍施設で働いたり、アメリカの小説の翻訳をしたこと。芸人のたこ八郎さんや役者の殿山泰司さんのこと。さまざまな経験がコミさん節で、時に生々しく、赤裸々に語られています。
飲み屋で隣り合ったおじさんの話を聞いているうちに、笑い泣きし、少し背筋が伸びる、そんな面白くもすごみのようなものが感じられる本です。
【紹介者】
古書ダンデライオン 中村明裕さん
古書ダンデライオン 中村明裕さん
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