愛して飲んで歌って
3月7日(土)から京都シネマで公開
奇抜な趣向と軽妙さがきわだつ、名匠が残した最後の作品
冒頭、田園風景の実写から、画面は一転。フランスの人気コミック作家ブルッチによる書き割りを背景にした、いかにも作り物っぽい空間で、3組の夫婦の“それぞれの事情”が語られていく。いわば、映画と演劇のマリアージュといってもいい手法を駆使したのは、昨年3月にこの世を去ったアラン・レネ監督。古い映画ファンなら『二十四時間の情事』や『去年マリエンバートで』をなつかしく思うだろうが、この遺作は、軽やかな遊び心に貫かれている。
3組の夫婦の旧知の男、ジョルジュが病気のため余命いくばくもないという事実が明らかにされるところから、騒動が始まる。彼を元気づけるために地元の劇団に誘ったりするが、そのうちにジョルジュと女たちの驚くべき過去が噴出。さらに、ジョルジュは最後のバカンスのお供に複数の女性を誘っていて…。
物語の核となるジョルジュなる人物が登場しないのに、その人物像を鮮やかに印象づける。監督の公私にわたるパートナーだったサビーヌ・アゼマや、イポリット・ジラルドほか出演。円熟した俳優たちによるユーモラスな駆け引きを楽しんで! ベルリン国際映画祭で、革新的な若手監督に与えられるアルフレッド・バウアー賞(銀熊賞)受賞というのも話題となった。おみごと!
(ライター 宮田彩未 )