舟木一夫 特別公演
2月20日(金)まで、大阪新歌舞伎座にて公演中
変わらぬ歌声に、甘酸っぱさがよみがえる
あの時の「高校三年生」が、昨年の12月に70歳を迎えたという。涼しげに整った面立ちも、変わることのない心地よい歌声も、決して“あのころ”を裏切ることなく…というよりも、舟木一夫は、常にファンの、乙女心や青春の心の揺れに寄り添って年齢を重ねてきた、ある意味、奇跡のような歌手だと思う。アイドル時代の輝かしさ、その後の不遇時代、そして復活を果たしたのちの目ざましい活躍ぶり。観客は、そんな彼の歌声に聴き入り、その姿に見入りながら、あのころの自分に思いをはせているにちがいない。
第1部の「~おとぼけ侍奮闘記~花の風来坊」では、大名の若様が、遊び人に扮(ふん)して、町の人々と関わっていく姿を、粋な風情で演じ、第2部は、いよいよ「シアターコンサート」。彼の軽妙な語りにより、ヒット曲が次々と披露される中、「君よふり向くな」ではナント客席総立ちで手拍子の嵐。また「高校三年生」のイントロが流れると、なにやら鼻の奥がツーンとする甘酸っぱい切なさを実感。そして、ピアノ伴奏だけでスローな歌い出しにアレンジした「高原のお嬢さん」は圧巻だった。さらに今回は、大阪にちなんだ「浪花恋しぐれ」「河内おとこ節」など、日本の名曲を数曲カバーしているのも見どころの一つとなっている。
(文筆業 あさかよしこ )