今年寄せられた相談で多かったのが「転職」「定年退職」「子ども」に関する事柄。この3つをキーワードに、これからの時代を乗り切る心得について、3人の診断担当者に聞きました。それぞれの近況報告も、一緒に紹介しますね。
転職で収入が減る場合も生活費の半年分は貯蓄を
八束和音さん
「転職」による家計の変化の中でも、収入がダウンしてしまうケースは、家族へのダメージが心配されます。
「職場の環境が悪く仕事を辞めたい」「キャリアアップをしたい」などの要望を持つ人は、お金にまつわる準備を整えておきたいですね。自己都合で退職をしてから就活する場合には、3カ月の間は失業保険が給付されません。収入のない期間を支えるためにも、最低でも生活費の半年分にあたる貯蓄を、転職前につくっておきましょう。
また、転職後しばらくは、個人の〝信用〟が低下します。クレジットカードが作りにくい、住宅ローンを組みづらいといった事態も想定されます。勤続年数が途切れる前にクレジットカードを作っておく、マイホームの取得を考えている場合には安易な転職は慎む、といったことも意識しておきたいものです。
不安を和らげるポイントは、家族がいる場合、転職による収入ダウンをカバーできる状況があること。「夫が転職を考えているので妻のパート収入を増やす」といった、家族のチームプレイがとても大切です。
退職後の全財産は3つの目的別に管理して
山副耕一さん
退職前後の生活では、「お金」と「生きがい」がポイントになります。
お金は、まず、退職後に保有する全資産を目的別に分けること。つまり、自分の財産を別々の財布で管理してください。財布の名前は、「生活に使うお金」「介護に備えるお金」「子どもに遺(のこ)すお金」の3つ。この作業は、退職後の生き方を考えるきっかけとなります。退職まで時間がある場合は、財布の金額が退職時の貯蓄目標額となります。
次に、退職後の収支計算を行います。チェックポイントは黒字か赤字か。もし赤字なら、その総額が前述の「生活に使うお金」の範囲内に収まるか確認してみてください。介護施設に入居した場合、年金だけでは月々の費用をカバーできない状況も想定されます。それまでの期間は黒字家計を心がけましょう。
生きがいが大切とわかっていても、すぐには見つからないもの。退職前から趣味を持ち、心の準備を始めましょう。また、働くことを生きがいにする方法もあります。今は、ボランティアやNPO団体などを含め、社会に貢献するさまざまな仕事があります。
インフレを踏まえ、教育費の計画は柔軟に
薮内美樹さん
子どもにかかる費用は、年齢に比例して増大します。大学進学を考えている場合は、入学時が支出のピーク。私立大学の授業料は、文系で年間約80万円、理系で約130万円。高校まで公立の場合は塾代などを含め年間30万~50万円なので、収入でやりくりできる範囲とされていますが、大学入学後は貯蓄の取り崩しも予想されます。
貯蓄の目標額は、大学までに300万円。児童手当を全て積み立てれば約200万円になるので、月々の貯蓄は、児童手当プラス5000円と考えましょう。
ただし、バブル崩壊から約20年、横ばいで推移している給与に対し、大学の授業料は1.3倍程度と上昇傾向に。さらに、インフレを考慮すると、ためるだけでなく増やすことも意識して金融商品を選びたいところです。
学資保険は、「無配当」ではなく「有配当」タイプを。金利上昇に対応できる個人向け国債の活用や、インフレに強い投資信託などを併せ持つという方法もあります。
塾・習い事代や被服費、通信代などにお金をかけすぎず、インフレ対応型の資金計画を立てましょう。
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