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試写室・劇場から

「嗤う分身」(わらうぶんしん)

12月6日(土)から京都シネマで公開

© Channel Four Television Corporation, The British Film Institute, Alcove Double Limited 2013

ドストエフスキーの短編が、シュールで不可思議な映画に!

なんとも風変わりで、強烈な印象を残す作品だ。原作は、文豪ドストエフスキーの『分身(二重人格)』。それを、イギリス出身の鬼才リチャード・アイオアディ監督が、どこかSF的なタッチにレトロな雰囲気を加味し、なぞめいた不条理劇として仕立て上げた。

内向的で要領が悪い主人公のサイモン・ジェームズは、勤続7年なのに、会社での存在感はゼロ。コピー係のハナに抱いている恋心も黙殺されている。ところが、一人の男の飛び降り自殺を目撃したのをきっかけに、とんでもない状況になった。容姿は自分にそっくりなのに、外交的で周囲への受けもいいジェームズ・サイモンという新入社員が現れ、生活の歯車を乗っ取られていく。

逆転の名前を持つ“もうひとりの自分”、変身願望、自己実現…ということに留意して見ていくと、非常に興味深い物語だと思う。画面を浮遊するシュールな感覚、そこにかぶさるように、坂本九の『上を向いて歩こう』や、ジャッキー・吉川とブルー・コメッツの『ブルー・シャトウ』など昭和歌謡曲が流れてきたのには驚いた。服装も髪形も全く同じという主人公と分身の二役を演じ分けたジェシー・アイゼンバーグが出色! 『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカの愛らしさも光る。

(ライター 宮田彩未 

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