松本清張の名作サスペンス「疑惑」
10月26日(日)まで南座にて公演中
一つの真実をもとめる、二大女優の凄絶な競演!
現実の事件をヒントにした、松本清張サスペンスの舞台化。「ルビーの指輪」や、ノスタルジーをくすぐる、アンニュイなスタンダードナンバーが流れ、昭和のバブル期を目前にした、浮足立った危うさが伝わる仕上がりになっている。
雨の降りしきる夜の埠頭(ふとう)から、一台の乗用車が海に突っ込んだ。車の持ち主である白河(モロ師岡)は車内で死亡するが、妻の球磨子(浅野ゆう子)は、自力で脱出。白河に多額の保険金が掛けられていたことから、前科四犯の過去を持つ球磨子は保険金殺人の疑いで逮捕され、マスコミは、“球磨子はクロ”という報道を加熱させていく。その球磨子の弁護に名乗りを上げたのは、佐原律子(高橋惠子)という優秀な女性弁護士。最初からソリが合わず対立し合う二人。そして公判がスタートする。
マスコミが、独自の“正義感”から、容疑者をクロと書き立て、それに扇動されていく大衆という図には、そら恐ろしいリアリティーがあり、相反する性格の二人の女が、「裁判に勝つ」という一つの目的のために接する姿には、協力というより戦いのようなすさまじさがある。奔放に生きる球磨子を演じる浅野ゆう子と、はた目には良妻賢母で優秀な弁護士に見える律子を演じる高橋惠子は、まさにはまり役!
(文筆業 あさかよしこ )