八月の六日間
北村薫 角川書店・1620円
山という非日常の世界でほどけていく心
先日、南アルプスの北岳に登ってきました。ちょうど人生の選択に迫られ、どちらに進めばよいのか迷っていたときでした。ほんの少しの間、山という非日常の世界へ飛び込むことで今の自分が見えてくる。非日常が日常をよりよくしてくれることを知りました。
この小説の主人公も仕事で心をすり減らす毎日。そんなときに出あった山歩きを重ねるうち、心がほどけていきます。僕も大好きな北アルプスや八ケ岳が舞台で、読み進めるとあの美しい風景がよみがえってきます。
「思い通りの道を行けないことがあっても、ああ、今がいい。わたしであることがいい。」という言葉に救われた思いになりました。
【紹介者】
ことばのはおと 中村仁さん
ことばのはおと 中村仁さん
()