神宮希林 わたしの神様
6月7日(土)から京都シネマで公開
見える世界と見えない世界へ、超・個性的な女優の心の旅
近年の樹木希林さんは、余計なものを退け、まっすぐに、心のままに生きているように見える。そんな彼女が、式年遷宮前後の伊勢神宮を訪ね、神様について考え、さまざまな人々とふれあう中で、時代について思いをめぐらすユニークなドキュメンタリー。発する言葉や行動に彼女らしさがあふれ、思わずふふふと笑いながら、しみじみとしたいい旅に同行したような気分になれる。
70歳になった希林さんは「自分の身を始末していく感覚で」毎日を送っているという。東京の自邸にカメラを招き入れて飾りなく語り、夫の内田裕也さんのお風呂に関する話で爆笑を誘う。そして、初のお伊勢まいりに出かけるのだが、この風変わりな女性に対し、神様は感動的な一瞬を最後に見せてくれる。
神様にお願いするのでなく、ただ感謝する…神様とのそういう距離感。それは、戦争で友を亡くした歌人・岡野弘彦さんとの出会いや、宮城県石巻市に再建された小さなお宮の場面でも想起される。裕也さんとの微妙な間柄にも話は及ぶのだが、単に彼女の人となりを描くのでなく、同時代に生きる私たちに、本当に大事なことを投げかけてくる。ほのぼのとした感じなのに、き然とした意志がある。まるで樹木希林そのものみたいな作品だ。伏原健之監督。
(ライター 宮田彩未 )