歌手 加藤登紀子さん
人生は、水の流れと同じ。流れきるしかない
5月の春秋座(京都造形芸術大学内)で、加藤登紀子さんが、モノオペラに初チャレンジ。ピアフとデートリヒの生きた時代を語り、そして歌います。
「人生って川を流れていく水みたいなもので、その流れを変えることは、できないのね。もうそこを流れきるしかない。それが私の人生哲学なんです。たとえば、誰かと会って恋をしちゃったら、それをやりきるしかないんですよ(笑)」
ひと言ひと言から、深い凄みが感じられます。東大在学中に歌手デビュー、学生運動に参加、そこで知り合った闘士との獄中結婚、出産、夫の死…と続く中で、1000曲近くのレパートリーを歌い続けてきました。
「その全部が、世の中の人に認められたわけではないけども、私にとっては宝ものだし、経験した全てが私の血肉になっているわけです。それも運命。命を運んできたということですよね」
生きる仕事は、死ぬまで終わらない
来年、歌手生活50周年を迎えるベテランの加藤さんが、5月24日(土)の「加藤登紀子 春秋座コンサート」で、一人で演じる〝モノオペラ〟にチャレンジします。70歳を超えてからの、そのバイタリティーはどこからくるのでしょう。
「世の中でいう定年って、もったいないですよね。だって“生きる仕事”っていうのは、死ぬまで終わらないでしょう?
自分の持っているその時間を、どう生きるかは、自分で決めなくてはいけないですからね」
今回、加藤さんが、たった一人で演じるのは、歌手・エディット・ピアフの物語。終生彼女を支え続けた女優・マレーネ・デートリヒの語りでつづられる舞台。そこにはきっと、加藤さん自身の人生も、見えかくれするに違いありません。
(文・あさかよしこ )