ウォルト・ディズニーの約束
3月21日(祝・金)からT・ジョイ京都ほかで公開
作家の心に居座った“石”をときほぐした映画人の情熱
かれんな容姿と美しい歌声の持ち主ジュリー・アンドリュースが主演したファンタジックなミュージカル映画『メリー・ポピンズ』を覚えていますか? ウォルト・ディズニーがこの映画を製作しようと原作者のP・L・トラヴァースと交渉し、足かけ20年。実現までには、思わず胸をぐっとつかまれるような裏話があったのです。
映画は、少女時代のトラヴァースと父親の関係を濃密に描きつつ、『メリー・ポピンズ』製作に向けてのディズニー側とのすったもんだを並行して語っていきます。もともと映画化に反対だったトラヴァースは、ミュージカルはだめ、アニメなんてとんでもないと、さまざまな厳しい注文を出しますが、彼女を演じたエマ・トンプソンは、単にガンコな女性作家というのでなく、ひそかに抱き続ける過去のトラウマと向き合っていく人物像を表してみごと! 対するのは、ディズニー役のトム・ハンクス。二人の演技合戦は十分な重量感があり、さらにコリン・ファレル、ポール・ジアマッティ、子役のアニー・ローズ・バックリーにも目を引かれます。
ディズニーが約束したこととは? それを知った時、思わず感涙…。当時のトラヴァースの声が出てくるエンディングにも耳を傾けて。ジョン・リー・ハンコック監督。
(ライター 宮田彩未 )