聖なる酔っぱらいの伝説 他四篇
ヨーゼフ・ロート 岩波文庫・987円
1930年代のパリで起こった、“奇跡”の物語
これは、ヨーゼフ・ロートが自らの理想とする死への向かい方を小説に書き、まさにそのように生涯を閉じた直後に刊行された“自画像”ともいっていい作品です。
1930年代。パリのセーヌ川にかかる橋の下で、酒におぼれた浮浪者が年配の紳士から200フランを借りるところから話は始まります。もらうのではなく借りるという浮浪者の誇り、それがもたらす奇跡のような出来事、そしてその誇りを持った死への過程が語られていきます。
当時のパリの雰囲気はもちろん、西欧の宗教観なども垣間見えるこの物語。舞台は春のはずですが、12月になると思い出す、私には聖なる一冊なのです。
【紹介者】
エレファントファクトリーコーヒー 畑啓人さん
エレファントファクトリーコーヒー 畑啓人さん
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