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試写室・劇場から

もうひとりの息子

11月2日(土)から京都シネマで公開

©Rapsodie Production/ Cite Films/ France 3 Cinema/ Madeleine Films/ SoLo Films

民族問題を超えるか?未来と結ぶ希望のきずな

近ごろ本欄で「そして父になる」を紹介させていただいたが、同じような題材でも、民族や宗教の問題がからむと、ここまで複雑でデリケートになるのかと思ったのが、この作品である。

物語は、18歳になったフランス系イスラエル人の少年が兵役検査で血液を調べられたことに端を発する。両親と血液型が合わないのだ。細かな調査で、18年前の湾岸戦争の混乱期、別の赤ん坊と取り違えられたことが判明。相手の家族は、高い壁で隔てられたヨルダン川西岸地区に住むパレスチナ人だった…。

「そして父に…」と同じように、母親たちは悲しみやとまどいを感じながらも、状況を受け入れようとする。そして、父親の1人が「出生時になぜわからなかったのか!」と妻を責めるのも同じ(自分の子かどうか疑ってかかる母親はまずいないと思うけど)。大きく違うのは、少年たちの視点から物語を前へと進めているところ。彼らはお互いの家族に興味を抱き、壁を越えて行き来し始める。

長年争っているイスラエルとパレスチナの状況や、それぞれの保守的な父親の考え方も超えて。未来への希望を表すエンディングもいい。監督はフランス人女性のロレーヌ・レヴィ。出演はエマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベほか。

(ライター 宮田彩未 

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