そして父になる
9月28日(土)からTOHOシネマズ二条ほかで公開
育てた子どもは他人の子!衝撃の事実が家族を変える
今年のカンヌ国際映画祭審査員賞受賞の記憶も新しい是枝裕和監督作品である。昭和40年代ごろまでよくあったという赤ん坊取り違え事件を題材に、家族とは何か、血のつながりとは何か、見る者にも問いかけてくる。重さと軽やかさを縦横に張り巡らせながら、見応えのあるドラマに仕上げていると思う。
都心の高級マンションに、妻と6歳の息子と共に暮らすエリートサラリーマンの良多。彼の人生は順風満帆に見えたが、ある日、驚きの事実を知らされる。息子が誕生した病院で、子どもの取り違えがあったという。やがて実の息子や、その家族と対面するが…。
福山雅治が“上から目線”の鼻持ちならない父親役を演じ、リリー・フランキーが気さくで子ども好きな下町の親父ぶりを発揮する。人格のコントラストが明瞭で、どう見ても福山くんに分が悪いが、物語後半で、題名通りに主人公はあらためて父親としての自覚を持つ。育てた息子に、並行する道を歩きつつ語りかける場面ではつい涙!DNAよりも、互いに紡いだ時間こそいとおしい。そうでしょ、やっぱり。
従来の作品でも子役の力を引き出してきた是枝監督の才に感心する。実に自然体なのだ。共演陣に尾野真千子、真木よう子ほか、今年逝去した夏八木勲の姿も。
(ライター 宮田彩未 )