凶悪
9月21日(土)からMOVIX京都で公開
ある死刑囚の告白が、思いもよらぬ闇をたぐり寄せる
雑誌ジャーナリストの藤井は、獄中にある死刑囚・須藤から届いた手紙を託される。「自分は死刑判決を受けた事件の他に、誰にも話していない3つの殺人に関わっています」という記述に引っかかるものを覚えた藤井は須藤に会いに行く。そして、それらの殺人の首謀者が、“先生”と呼ばれる不動産ブローカーであることを聞いた藤井は、調査して記事にしてほしいと頼み込まれる…。
現在と過去を行ったり来たりしながら、事件のあらましが明らかにされていくのだが、だんだんと背筋が寒くなる。うやむやにされている真実を追い詰めたいという主人公の執着は、私生活にも影響を及ぼし、彼の形相が変わってくるのだ。熱く若々しいジャーナリスト魂は、悪によってほんろうされ、むしばまれていくかのよう。そうして、ラストに、“先生”が藤井をあざ笑うように言うことばの重さ、的確さ。まさに、人の心の奥にある闇を指さしていて、どきりとさせられる。
これは実際に起きた事件について書かれたノンフィクションをもとに映画化されたものだが、まさしく“事実は小説より奇なり”である。山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキーが、それぞれ印象深い演技を披露している。監督は白石和彌。15歳以下は観覧禁止のR15+指定。
(ライター 宮田彩未 )