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試写室・劇場から

約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯

5月18日(土)から京都シネマで公開

©東海テレビ放送

獄中からの無実の叫びに、かくも冷たく固い司法の壁

死刑の執行については、当日の朝に本人に知らされるという。午前中、近づいてくる廊下の足音におびえ、昼食が出されれば、「今日は生き延びた」とほっとする。そんな生活を何十年も強いられてきた人がいる。奥西勝さん、86歳。昭和36年に起きた「名張毒ぶどう酒事件」の犯人とされ、戦後の裁判で唯一、無罪から極刑へと逆転判決を受けた。その後、再審請求の決定がなされたが、棄却されている。

この事件は、名張市の山間にある村での懇親会で起きた。そこに用意されたぶどう酒を飲んだ5人が死亡したのである。逮捕された奥西は、農薬を入れたといったん自白したが、後に自白を強要されたと主張する。彼の犯行に疑念の生じる証拠も出てきたが…。

獄中で約半世紀を送る人と、彼を支援する人々の闘いのドラマである。えん罪に関するニュースでいつも思うのは、裁判に及ぼす“自白”の影響力の強さと、『疑わしきは罰せず』という刑事事件における鉄則の不在だ。それを本作でも強く感じ、司法世界の驚くべき実態にもあ然とする。なぜ、再審が許されないのかと、もう時間がない高齢の死刑囚へと思いはつのっていく。名優・仲代達矢と樹木希林がいぶし銀の演技を披露し、天野鎮雄、山本太郎が脇を固める。齊藤潤一監督。

(ライター 宮田彩未 

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