アンナ・カレーニナ
TOHOシネマズ二条で公開中
意匠も衣装も格別華やか!
劇場型演出が光る悲恋ドラマ
文豪トルストイの名作が、斬新なスタイルで映画化された。19世紀末のロシア、社交界の華と呼ばれる美しい人妻アンナが、青年将校ヴロンスキーと恋人関係に。世間の目や夫の目にさらされながら、にっちもさっちもいかなくなるが、激情の嵐は高まるばかり…。
劇場型のセットを用いた大胆な手法に驚く。ステージや客席、バックステージまで、群像が動き回る場面は、演じ手の歌が出てくるわけでもないのに、まるでミュージカルの雰囲気。ページをめくるように、一瞬にしてシーンを移す映画的手法との組み合わせは、息をのむ面白さだ。アンナ役のキーラ・ナイトレイは古典的というより現代風の女性像に迫り、夫カレーニンを演じたジュード・ロウは、クールで孤独な影が印象的。ヴロンスキー役はアーロン・テイラー=ジョンソン。
なんとなく結婚して平穏な家庭を築いてきたヒロインが、ある日、本物の恋に出会う。その天にも上るようなワクワク感と、モラルに迫られて悩む葛藤の深さ、自分自身を追い込んでしまう切なさなど、舞台劇でもキャリアを積んできたトム・ストッパードの脚本力がさえる。本年アカデミー賞で衣装デザイン賞に輝いた豪華なドレスやジュエリーも必見。監督は『プライドと偏見』のジョー・ライト。
(ライター 宮田彩未 )