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試写室・劇場から

アルバート氏の人生

2月2日(土)から京都シネマで公開

©Morrison Films

偽りと孤独の日々を変え、閉じた心を押し広げた力とは?

人はだれでも仮面をつけている、あるいは演技をしているとかいうけれど、この映画の主人公ほどの人はめったにいない。19世紀のアイルランド、長年、ホテルのウエーターとして働いているアルバート氏は、控えめで実直、気配りのきくサービスぶりで、一目を置かれている。しかし、“彼”には知られてはならぬ重大な秘密があった…。

なぜアルバートが偽りの人生を歩むことを決断したのか。その背景に、19世紀のアイルランドを襲った大飢饉(ききん)や疫病という悲しい歴史がある。貧困に苦しむ社会の中で、身寄りのない女が強く生き抜くための選択肢は限られていたのだ。だが、1匹のノミがきっかけで、アルバートは実は女性だと知られてしまう。映画で特に描かれてはいないが、アルバートは男性より女性に心をひかれ、出会った2人の女性により、自分に正直な道を見つけ始める。

本年アカデミー賞では3部門にノミネート。この主人公を舞台で演じて以来、30年間も映画化を夢見てきたグレン・クローズと、助演のジャネット・マクティアがとにかくイイ! すごくイイ!

へたをすれば悲惨なお話になりがちなのに、哀切を突き抜けた陽気なウイットすら漂ってくるではないか。演技者の力量とロドリゴ・ガルシア監督の演出が光る秀作。

(ライター 宮田彩未 

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