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試写室・劇場から

映画 立川談志

1月12日(土)からMOVIX京都で公開

©2012 「映画 立川談志」 製作委員会

破天荒な生きっぷりと、独自の落語哲学を貫いた達人

落語家・立川談志が他界して1年余り。あれでは敵をつくるだろうなと感じさせる皮肉っぽい毒舌、タブーなんて気にしない行動、それでいて楽々と垣根を越えてしまうような軽妙さを思い出す。あまりに強烈な個性を発散させていた人だから、好き嫌いも大きく分かれるし、特に関西人は「べらんめえ」口調の江戸落語より、親しみやすい関西弁の上方落語の方をついひいきしてしまう。

しかしながら、この映画を見て、立川談志という人のすごさに一歩も二歩も近づけたような気がした。彼が必死に追いかけたもの、イリュージョン(幻影、幻想、錯覚)という言葉を用いて、従来の落語の枠に収まらない面白さを生み出そうとしたその哲学に触れると、達人も努力の人であったのだという当たり前のことに気づかされる。芸を究め、他と一線を画すために、彼は感覚を磨き上げ、理論武装も行ったのだなと思う。

インタビューや家族と共に過ごすプライベートな映像とともに、彼の持ち味がいかんなく発揮された円熟期の落語2席が登場。掛け合い言葉の妙に大笑いさせられる『やかん』と、夫婦の心の機微を人情味豊かに描きだす『芝浜』で、いずれも貴重な未公開映像である。俳優の柄本明がナレーションを担当した。加藤たけし監督。

(ライター 宮田彩未 

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