人生の特等席
11月23日(金・祝)からT・ジョイ京都ほかで公開
遠かった父と娘の距離、近づけたのは思いやりと真実
「もう俳優はや~めた」と言ってたようなクリント・イーストウッドだが、この物語の役柄が彼好みであり、まな弟子ロバート・ロレンツの初監督作品ということもあって、出演を決めたらしい。プロ野球界の裏方であるスカウトマンの世界を垣間見ながら、父娘の心のキャッチボールをじっくり楽しめる。
主人公のガスは、メジャーリーグ最高のスカウトマンと呼ばれた男だが、年をとり、仕事道具ともいえる視力が衰えてきた。近ごろのデータ野球に背を向け、従来の自分のやり方を貫こうとする彼を、御用済みにしたい球団幹部もいる。次のドラフトを控え、大物との評判高い選手の視察に出かけたガスだが、彼の現状を心配する娘のミッキーが現れて…。
頑固一徹の父と、それを放っておけない娘。自らの老いを知りつつ、意地を通す男の悲哀に、幼いころから抱き続けた娘の愛憎がからまり合う。大切なビジネスチャンスを横に置き、父のもとに駆けつける娘の姿に、この現代ではあり得ないほどの優しさを感じた。ミッキー役は、イーストウッドの孫とも見える年齢のエイミー・アダムス。他に、ジョン・グッドマン、ジャスティン・ティンバーレイクが出演。勧善懲悪スタイルの、胸のすくような結末が待っている。
(ライター 宮田彩未 )