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試写室・劇場から

アルゴ

10月26日(金)からT・ジョイ京都ほかで公開

©2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ちゃちなサスペンスドラマなど吹っ飛んでしまう実話力!

こんなことが実際にあったなんて! 事件から18年もたってから、当時の大統領クリントンが機密扱いを解除した命がけの人質救出作戦。それなのに、つい笑っちゃうほどの破天荒さだ。

それは、1979年11月のこと。イランのアメリカ大使館を過激派が襲った。彼らの要求は、アメリカに逃れた前国王パーレビの引き渡しだ。混乱のさなか、大使館員のうち6名がカナダ大使の私邸に逃げ込んだ。彼らの脱出が露見して捕まれば、公開処刑は間違いない。そこで、CIAは人質奪還のエキスパート、トニー・メンデスに使命を下すのだが…。

その手法が何ともおかしい。架空の映画製作をでっち上げ、6名にロケハンに来た撮影スタッフを演じさせて出国させるというもの。迷案・珍案ともいえるこの作戦が進行するにつれ、幾つもの危ない橋を渡ることになり、ヒヤヒヤ感もどんどん増していく。

なぜイラン過激派がそういう行動に出たのかという裏の部分にはあまり触れられず、犠牲者アメリカという立場が取られているのは、社会派ドラマでないから仕方のないところだろう。娯楽に徹して演出したのは、主演と監督兼務のベン・アフレック。アラン・アーキン、ジョン・グッドマンのベテラン勢がとぼけた味を出している。

(ライター 宮田彩未 

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