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試写室・劇場から

ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳

10月20日(土)から京都シネマで公開

©2012『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』製作委員会

反権力を貫き、真実に迫る。
凛(りん)とした姿に脱帽!

ああ、ほれちゃったな、と思う。相手は90歳の男性なんだけど、なんてカッコイイんだろう。彼の名は、福島菊次郎。伝説の報道カメラマンと呼ばれている彼に密着取材しながら、その激動の歴史と今を映し込んだ秀逸ドキュメンタリーだ。

1921年生まれの彼がこれまでに撮影した報道写真は、25万枚以上。その原点は、原爆で焼け野原になった広島だ。被爆者一家の苦難を10年もかけてカメラでとらえて注目された。その後、学生運動や三里塚闘争、自衛隊、兵器産業、公害、ウーマンリブ、原発など多様なテーマを追いかけ、戦後日本の裏の部分にも鋭いシャッター音を浴びせてきた。暴漢に襲われて重傷を負い、家に放火されても屈しない。

真の反骨精神とはこういうものなのか。年金の受け取りを拒否するほどに、国家に対する彼の姿勢はゆるがない。カメラを構える時の身の軽やかさに驚き、作品の訴求力の強さに圧倒される。一方で、補聴器の注文に行ったり、愛用のパソコンに拝んだりするほのぼのとした日常風景もとらえられている。

そして、福島菊次郎は被災地の福島に向かう。幾たびも人の目をくらますニッポンの嘘を暴くため。それは広島から始まった、彼の当然の道筋だ。長谷川三郎監督。ナレーションは大杉漣。

(ライター 宮田彩未 

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