水辺にて
梨木果歩 ちくま文庫・546円
“水”に触れ、自然の豊かさの奥に作者が見つけたものは?
梨木果歩さんの小説を読むと、自然観、世界観の奥深さ、多様性に魅了されます。ふとした日常が、少しずつ視点が変わることで、新たな輝きを得ていく。と、同時に、そこに、何か怖いようなものを感じることも。
このエッセーでは、日本各地の湖や川でのカヤック乗り体験、外国の湖沼地帯や海辺を巡る旅で感じ、考えられたことが、小説さながらの濃密な文章でつづられています。カヤックから見える景色、植物、鳥。アザラシの話。原生林。水辺という、世界の一つの際(きわ)で、梨木さんは、自然の豊かさの奥に、それと相反するものも見つけます。それこそが、また豊かな物語を生む源泉なのだな、と感じた一冊です。
【紹介者】
古書ダンデライオン 中村明裕さん
古書ダンデライオン 中村明裕さん
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