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試写室・劇場から

かぞくのくに

8月11日(土)から京都シネマで公開

©2011『かぞくのくに』製作委員会

近くて遠い国、その高い垣根。分断された家族の思いに迫る

在日コリアン2世の視座から、『ディア・ピョンヤン』と『愛しきソナ』のドキュメンタリー作品2本を世に放ったヤン・ヨンヒ監督。この新作は、フィクションではあるが、先の2作品に共通する彼女自身の体験や切ない思いがこめられ、見る者の心を穿(うが)つ。

70年代に“帰国事業”によって北朝鮮に移住した兄ソンホが、病気治療のため一時日本に帰国する…。妹のリエも父母も待ち遠しくて仕方がない。やっと姿を見せたソンホの後ろには、見張り役のヤンという男が張り付いていた。久しぶりの日本、どこか感覚のずれた兄はぎこちなくも妹と気持ちを通わせようとするが、その口から意外な言葉を耳にしたリエは…。

「かぞくのくに」とは何だろう。兄の住む国なのか、その兄のことを思いやる家族が暮らす日本なのか、あるいは、家族という共同体を意味するのか。いずれでもあるように感じる。自身の兄たちも北朝鮮で暮らす監督の、強い怒りや悲しみがじわりと伝わってくる。そして、特別な状況にあるこの家族のいくつかのシーンは、その共感力でもって、見る者を彼らのそばに呼び寄せる。やっかいで、でも、いとおしい家族よ! 安藤サクラ、井浦新が素晴らしくイイ。『息もできない』のヤン・イクチュンが重要なヤン役で登場する。

(ライター 宮田彩未 

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