別離
4月28日(土)から京都シネマで公開
鋭い視点でとらえられ、
長く余韻を残す家族の物語
ベルリン国際映画祭で史上初の主要3部門独占、本年度アカデミー賞ではイラン初の外国語映画賞に輝いた注目作がやって来る。家族と家族、それぞれの中での思いの違い、そしてかけがえのない者を守るための“うそ”。親たちの間で揺れる子どもたちの切ないまなざしが胸を熱くする。
11歳の娘の将来を思って国外移住を考えている妻シミンだが、同居している義父がアルツハイマー病のため、夫のナデルは縦に首を振らない。シミンはしばらく実家に戻ることにし、ナデルは家事や父の世話のためにラジエーという女性を雇う。だが、彼女をめぐって大変な事件が起こり、ナデルは訴えられ…。
宗教や慣習などが生活を大きく支配するイラン事情や、一方は中流階級、他方は貧困層という格差を背景に、ドラマは見る者の目をどんどん引き寄せる。国や民族は違えども、彼らのある部分に共感し、人はなぜうそをついたり、ごまかしたり、他人の意見を頭から聞き入れなかったりするのか、と思う。その大人たちをじっと見つめている少女2人の目、特に、結末をあえて明かさないラストシーンは、いつまでも心をとらえて離さないだろう。レイラ・ハタミ、サレー・バヤトの2女優をくっきりと画面に焼き付けたのは、アスガー・ファルハディ監督。
(ライター 宮田彩未 )