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試写室・劇場から

ミケランジェロの暗号

11月26日(土)からMOVIX京都で公開

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一枚の幻の絵をめぐって、
スリリングな駆け引きが展開

ユダヤ人とナチスにまつわる映画は、これまで多く製作されてきたが、本作は娯楽要素を多分に含んだミステリー。ユダヤ人が財産を略奪されたという悲しい歴史的事実を基本にすえながらも、結末は、拍手喝采したくなるような快感をもたらしてくれる。

1938年のウィーン。画商を営むユダヤ人の一族・カウフマン家は、ミケランジェロの幻の名画を所有しているといわれていた。一家の息子・ヴィクトル(モーリッツ・ブライブトロイ)は、使用人の息子ルディ(ゲオルク・フリードリヒ)に、つい、その絵のありかを教えてしまう。ナチスを信奉していたルディは、それを密告し…。

ヴィクトルの一家が裕福であるということもあってか、「ナチスに痛めつけられるユダヤ人」という構図に支配されていない。機転をきかしてヴィクトルが服装を取りかえる場面など、ナチスを反対に振り回すほどのユーモアも。飛行機事故で、ヴィクトルとルディの2人だけが生き残るというのはかなりご都合主義ではあるが、名画は本当にあったのかなかったのか、とハラハラさせられ、ヴィクトルの父親のなぞの言葉「視界から私を消すな」の意味が明らかになったとき、見る者は主公とともにほくそえむ。ウォルフガング・ムルンベルガー監督。

(ライター 宮田彩未 

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