エンディングノート
10月1日(土)からMOVIX京都で公開
父親の“終活”を追い続け、娘の心に刻まれたものは?
残り少ない時間を意識し始めたとき、人は何を思い、どう行動するのか。自分の生き方をとらえ直すとともに、死ぬまでにやっておきたいこともきっと考えるのだろう。このドキュメンタリーは、がん告知を受けてから半年間の父親の姿をじっと追いかけたプライベートフィルムである。であるけれど、一つの家族のお話が、みんなの家族のお話になっていくような確固たる普遍性を獲得しているのはすごい。
企業戦士としての道をひたすら走ってきた砂田知昭は、67歳で退職し、さて、これからゆっくりセカンドライフを楽しもうとした矢先、健康診断で胃がんが見つかる。仕事で“段取り命”のポリシーを貫いてきた彼が、今度は自らの終わり方も段取りし始める。残される家族のため、彼は時として意外な行動に出るのだが、それはおかしかったり、切なかったり…。すったもんだあった妻に、初めて「愛している」という場面は悲しい。
主人公の次女であり、78年生まれの砂田麻美監督自身のナレーションが意表を突く。死者の声を代弁するそれは、芝居がかっているのに、見る者の胸にすとんと落ちてくる。つくづく、生と死はひとつながりなのだ、と思う。それを自身で段取りできるとは、ある意味で恵まれたことなのかもしれないけれど。
(ライター 宮田彩未 )