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試写室・劇場から

エクレール・お菓子放浪記

9月17日(土)から京都シネマで公開

©2011「エクレール・お菓子放浪記」製作委員会

苦しい時代の夢やあこがれは、雪の中で咲く一輪の花のよう

エクレールとは、「エクレア」と呼ばれるお菓子のフランス語読み。今ではけして高価なものではないが、食材が不足していた戦時中は、お菓子など庶民の手に入らないぜいたく品だったと聞く。両親が亡くなり、孤児となった少年が、お菓子にまつわる女性教師へのひそかなあこがれを胸におさめつつ、厳しい時代を生き抜いていくこの物語に、ふと現代を重ね合わせてしまう。

昭和18年、孤児院を飛び出した後、感化院に連れてこられたアキオ少年は、院長秘書の陽子先生が歌う『お菓子と娘』に心を引き寄せられる。その歌詞には見たことも聞いたこともないエクレールというお菓子が出てきて、陽子先生の優しさとともにアキオの胸に深く刻まれる。やがて、一人暮らしのフサノという女性に引き取られるアキオだったが…。 配役が素晴らしい!

舞台のミュージカルでも活躍しているアキオ役の吉井一肇は、天使の歌声と言ってもいい吸引力だ。また、意地悪ばあさん的キャラのフサノを演じるいしだあゆみ、旅芸人の座長役の林隆三ほかベテラン勢の好演が物語に妙味を加える。大震災前の宮城県や福島県でもロケが行われ、フィルムに焼きつけられた美しい風景に、じっと目を凝らした。監督は、「ふみ子の海」の近藤明男。

(ライター 宮田彩未 

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