未来を生きる君たちへ
8月27日(土)から京都シネマで公開
“負けるが勝ち”なんて誰も言わない時代だからこそ
久々に心ひかれる邦題だと思う。閉塞(へいそく)感のある現代を生きている私たちに、何かしら光を投げかけてくるほどに。原題は『復讐(ふくしゅう)』なのだが、スサンネ・ビア監督によれば、『赦(ゆる)し』であっても良かったという。そうなのだ、対極にあるこの2つの言葉が意味するものを、コインの裏表のように描いたのが、この作品であり、本年アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞を勝ち取った。
デンマークのある町、2組の父と息子がいる。エリアスは、周囲に影響を受けやすいイジメられっ子。その父アントンはアフリカで避難民の治療に当たる医師として多忙な生活を送っている。一方、クリスチャンは暴力性を内に秘めた少年で、母親ががんで亡くなったのは父のせいだとうらんでいる。「やられたらやり返す」式のクリスチャンに、エリアスは引きずられるが…。
9・11以降、「暴力の連鎖」に対する批判が起こったが、本作の中で、父親のアントンが身をもって子どもたちに示す主義こそ、未来への一つの鍵なのだ。少年たちをめぐる暴力の話と、アフリカでの部族間の争いの話が並行して語られ、息をのむほどに美しい風景のショットが、人々の営みに寄り添うようで意味深い。ミカエル・パーシュブラントほか出演。
(ライター 宮田彩未 )