4月の涙
7月23日(土)から京都シネマで公開
死をかけて闘うということ。生をかけて愛するということ。
1918年のフィンランド、内戦という厳戒態勢の中で、敵同士として出会い、つかの間、心をふれ合わせた女と男の物語は、痛みとともに、はかない美しさでもって見る者を揺さぶる。
ロシアから独立したフィンランドでは、労働者や小屋住み農民で構成される赤衛隊と、学生や自営農民の白衛隊との間で戦闘が起きていた。赤衛隊の女性兵のリーダーであるミーナは、仲間と共に白衛隊につかまるが、ただ一人生き残る。彼女の前に現れた白衛隊の准士官アーロは、公正な裁判を受けさせようとするのだったが…。
正義を守ろうとする気持ちが愛に変わっていくアーロの前で、ミーナのまなざしも柔らかになるが、信念を捨て去ることはない。ミーナの強さは半端でなく、一方、男性のアーロがだんだん“尽くす女”タイプに見えてきて、既成概念からすれば男女逆転! ここに狂的な判事がからみ、スリリングな人物構図だ。
フィンランド史上の暗部ともいえる時代を鮮烈に切り取り、ドラマチックな語り口で魅了するのは、アク・ロウヒミエス監督。献身から生まれた愛は、時を超えて人の中に根づくのだ、としみじみ感じさせる結末がいい。ピヒラ・ビータラ、サムリ・ヴァウラモという若手の実力派俳優にも恵まれた秀作である。
(ライター 宮田彩未 )