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試写室・劇場から

サンザシの樹の下で

7月9日(土)からMOVIX京都で公開

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一途な恋の、光とはかなさに時代の残酷な影を重ねた秀作

だれにでも、忘れられない恋というものがあるだろう。初恋だったり、切ない片思いだったり、もう二度と会えない人との運命的な恋だったり…。中国映画界の巨匠チャン・イーモウ監督の新作に、好きな人を見つめる視線の熱っぽさ、周囲のすべてが消えて二人だけの世界が浮き上がるあの感覚を思い出した。高い評価を得た『初恋のきた道』に通じる繊細な情感。やはりうまい人だ。

文化大革命下にある70年代初めの中国。農民にこそ教えを請うべきであるという政策のもと、都会の高校生も農村で住み込みの実習を行っていた。女子高生のジンチュウは、派遣された村で、明朗な青年スンと出会い、互いに好意を抱き合う。しかし、ジンチュウの家族が反革命分子として迫害を受けているため、問題があってはならないという母親の意思で仲を引き裂かれ…。

中国系アメリカ人のエイミーが書いた、実話をもとにした小説が原作。文革という嵐にほんろうされる中国版『ロミオとジュリエット』といえよう。許されぬ恋ほど燃え上がるものなのだが、その純愛はあれよあれよという間に悲しいクライマックスへと導かれる。ジンチュウを演じた新人チョウ・ドンユイがもうかわいくていじらしくて、涙を誘う。スン役にはショーン・ドウ。

(ライター 宮田彩未 

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