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試写室・劇場から

夢物語・華の道頓堀

6月28日(火)まで、大阪松竹座で公演中

藤山直美が魅せる 懐深い、時代遅れのいい女

男のサクセスストーリーには、“陰で尽くして、耐え忍ぶ女”の存在を欠かすことができない。今では、そんな女の話は時代遅れだと思うのだが、これは、その“時代遅れ”の女の人情話。ところが、なぜか女の私にとっても居心地がよくて、ウ~ン困った!

これは、道頓堀に芝居小屋が五座もあったころのお話。この町で出会ったのが、東京から来た若い歌舞伎役者・嵐扇之助(坂東薪車)と、つらい過去を背負って京都からやってきた旅館の仲居・妙(藤山直美)。ヨソモン同士の二人は、心を通わせ合い、妙は上方歌舞伎を学ぶ扇之助を姉のように母のように励まし、支えていく。やがて、その苦労が実り、扇之助は、ついには上方歌舞伎の大御所・尾ノ川勘右衛門(林与一)の名を襲名するまでになったのだが、それゆえに、次々と二人を引き裂こうとする試練が…。

妙と扇之助、この二人は、恋人や夫婦になるには、年や立場が違いすぎる。愛があるだけに、それはただひたすらに切ない。藤山直美は、そんな年上の女の姿を、明るくけなげに、時にはユーモラスに、それゆえに胸を突かれるような悲哀を漂わせて演じてみせる。しかし惨めさは少しも無い。この舞台に居心地の良さを感じたのは、きっと彼女の演技の懐の深さにあるのだと思う。

(ライター あさかよしこ 

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