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試写室・劇場から

ブラック・スワン

5月11日(水)からTOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都で公開

©2010 Twentieth Century Fox

創造とは深淵を見つめること。その強さを持てるかどうかだ

事前になるだけ情報をシャットアウトして映画を見るものだから、なんとなくバレリーナのサクセス・ストーリーをイメージしていたが、これはもう、ホラー映画だ。ヒロインが自身を追い詰めていく過程、割れた鏡が示す鋭角的な恐怖。ゾクゾク感たっぷりだ。

本年アカデミー賞で、ナタリー・ポートマンに主演女優賞をもたらした話題作。ライバルひしめくニューヨーク・シティ・バレエ団に席を置くニナは、『白鳥の湖』のプリマに選ばれ、夢をかなえる。だが、純真な白鳥と邪悪な黒鳥の2役を演じ分けねばならず、大きなプレッシャーと戦い始めるのだが…。

ニナが白鳥で、自由奔放なライバルのリリーが黒鳥を表すという単純な構図ではない。ニナ自身がしたたかな面を隠し持っており、リリーはニナの合わせ鏡のよう。激しいレッスンで黒鳥を踊るニナの中に、ぽっかり顔を出し始める暗黒、さらに元ダンサーの母親との確執、芸術監督ルロイに寄せるひそやかな欲望…それらが混然一体となってニナに突きつけてくる。どの芸術でも、境地に至るとは、自分の真の姿を真正面から見つめることなのだ、と。

『白鳥の湖』の物語をダブらせ、ダーレン・アロノフスキーが監督。ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニスほか共演。

(ライター 宮田彩未 

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