Rickyリッキー
4月23日(土)から京都シネマで公開
人間賛歌か、不条理劇か? フランソワ・オゾンの魔術
フランソワ・オゾン監督作品には、女性を主人公にしたものが多い。女性のいちずさやたくましさ、男性の目から見た不可思議さにいたく関心を注いでいるように思えるのだが、この映画でヒロインにプラスされるのが、とびっきりキュートで常識を踏み越えた赤ちゃん! 一筋縄ではいかないオゾン作品にまた新たな異色作が登場した。
7歳の娘を持つシングルマザーのカティ(アレクサンドラ・ラミー)は、工場で流れ作業の仕事をこなしながら、単調な日々を送っていた。スペイン人の新入り工員パコ(セルジ・ロペス)と恋に落ちたカティは、彼を家に迎え入れ、やがて赤ちゃんが誕生するが…。
リッキーと名付けられた赤ちゃんの背中に、羽が生えてくる場面で、思わずほほ笑む。まるで空飛ぶおもちゃのようなかわいらしさ、でも、よくよく考えてみれば、気色悪さでもある状況を、監督は、たまに出現する出来事のように描く。この変なバランス感覚こそが、彼の真骨頂なのだ。
だが、リッキーを中心に、カティも娘も、一度は家を出ていったパコも、少しずつ変わっていく。どう見ても通常ではない家族の中に生じたきずなを、見る者すら受け入れてしまう。ファンタジーの形を借りて、バラバラになった心を結ぶ恩寵(ちょう)のように。
(ライター 宮田彩未 )