世界のどこにでもある、場所
4月2日(土)から京都シネマで公開
病んでいる今の世を映した、万華鏡的な大森ワールド
詐欺容疑で指名手配された投資アナリストの田口は、乗ったタクシーの運転手に「もうここから先は行けませんよ」と言われ、そこがどこかもわからずに降りた。近くに、何だかさびれた遊園地と動物園を見つけたと思えば、戦闘ごっこをしているような男たち、動物に話しかけている女、妙なことを口走る老人…。いったい何なんだ?と驚く田口だが、彼らが神経科クリニックの患者であることに気づく…。
いっぷう変わった設定で、お話がどこへ行き着くやら予想もつかず、田口と同じ気持ちになって振り回される。乾いたコメディーであり、サスペンスやアクションもあり、ちょっとした人情話もからんでくる。
見終わると、題名にうなずくのである。世界はこのように混とんとしており、毎日のようにマスコミを騒がせる事件が起こっているではないか。それが自分には全く関係ないと誰が言えるだろう。大森一樹監督の、“病める現代”への一つのアプローチなのだ。
演者は、三宅裕司が率いる劇団スーパー・エキセントリック・シアターの面々。そのほか、水野久美、佐原健二が重要な役どころで顔を見せる。総勢23人の登場人物が繰り広げる変調ドラマを、懐かしい日本の名歌が彩り、それもまた面白い効果を上げている。
(ライター 宮田彩未 )