クレアモントホテル
2月26日(土)から京都シネマで公開
世代を超えた友情の秘密は、凛(りん)とした生き方なのね
映画を見終わった後、町に出る。すると、いつもの風景が、どこか違って見える。映画の中の人物が、しばらく自分のそばにいて離れない。これはそういう作品の一つ。胸にともされた明かりの、しみじみとした温かさにうれしくなった。
夫に先立たれ、意見の合わない娘から自立しようと、ロンドンにある長期滞在型の『クレアモントホテル』にやって来たサラ。期待はずれのホテルだったが、そこにはそれぞれに孤独を抱える人たちが住みついていて、彼女を優しく迎えてくれた。ある日、道端で転んだサラは、小説家志望の美青年ルードに助けられ、親交を深めるが…。
ええ人がいっぱい出てくるええ話、なのかもしれないが、最近の暗い世相の中、人生も捨てたもんじゃないと感じさせてくれるこういうストーリーもいいなと思う。サラのような老後は、数少ない奇跡だろうけれど。
老いても、ロマンチックで前向きなサラを演じたジョーン・プロウライトの確かな存在感に圧倒され、好青年ぶりで押してくるルパート・フレンドには乙女心(?)がさわぐ。監督のダン・アイアランドは、自ら映画館運営にかかわってきた人で、名画へのオマージュも随所に。ワーズワースやブレイクの詩も、物語のエッセンスとして巧妙に使われている文芸作。
(ライター 宮田彩未 )