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試写室・劇場から

ろくでなし啄木

2月13日(日)まで、イオン化粧品シアターBRAVA!で公演中

撮影:渡部孝弘

キャスティングの妙で魅せる、三谷ワールド!

今年は、人気劇作家・三谷幸喜の“生誕五十周年大感謝祭”なのだという。その記念すべき第一作が、この『ろくでなし啄木』。

時は今から100年ほど前の春先。ところは東北のひなびた温泉場。そこに宿泊しているのが、才能がありながら生きる力に乏しく、女と金にだらしがない歌人・石川啄木(藤原竜也)、その愛人トミ(吹石一恵)、彼女を密かに慕う啄木の親友テツ(中村勘太郎)の三人。なぜ三人は、ここにいたのか。あの夜、ここで何が起こったのか。なぜ啄木はその夜を境に二人の前から姿を消したのか…。エゴ、愛、欲望のからんだ謎が、三人それぞれの視点から語られる。

シリアスながら、そこは三谷作品! テンポの良さと、独特の毒を含んだユーモアに、思わず見入ってしまう。キャスティングがまた魅力的だ。“かわいい顔をした魔少年”を演じさせたら絶品の藤原竜也が、ここでもそのあやしさを存分に見せてくれるし、吹石一恵が思いがけない女優力を発揮し、物静かなエレガンスが持ち味の中村勘太郎が、まるで「蒲田行進曲」のヤスのような、またはフーテンの寅さんのような、ハジケッぷりで、それはそれは圧巻である。カーテンコールでは、客席から思わず「ブラボー!」の掛け声が…。

(ライター あさかよしこ 

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