愛する人
1月15日(土)からMOVIX京都で公開
37年の別離の月日を越え、母と娘の思いが結ばれる
人はみな、それぞれの家庭の事情を抱えて生きている。今、幸せだと思えるかどうか、もし、そうでないなら、何か欠落したものを感じているからだ。例えば、気になっている家族と会う手段がなく、別々の人生を歩んでいるという場合、この映画のように。
51歳のカレンは14歳の時に出産したが、あまりに若すぎたため、子どもは養子に出された。今はどこでどうしているやら、と気にかかるが、名前も顔もわからない。一方、実母に捨てられたという思いとともに成長したエリザベスは、弁護士としてのキャリアを積みつつも、周囲と自分の間に堅い壁を築いている。この2人の物語と、子どもができないために養子縁組を考える夫婦の物語が重なり合い、胸を揺らす結末へ。
母娘を演じるアネット・ベニングと、ナオミ・ワッツの繊細な表現力に打たれる。特に、年輪を刻んだベニングの顔のしわが語るものにひかれた。また、恋におちるサミュエル・L・ジャクソンという珍しい配役にも注目した。監督ロドリゴ・ガルシアは心に穴のあいた女性たちを見つめ、救済のドラマを与えた。それぞれに理解あるパートナーを配するほどに優しい視線で、新しい命が人のきずなの復活や、未来に向けた希望をはぐくむ姿を描いている。
(ライター 宮田彩未 )