鮎師
夢枕獏 文春文庫刊・590円
一匹の魚に魅せられて、突き進んでいく男たちの狂気
この小説は巨大な鮎に魅せられた二人の男がその鮎を釣ろうとする、という一見どこにでもありそうな話です。
しかし、本文に描かれる美しい川の光景と二人の家庭や命すら捨ててでも鮎を釣ろうとする感情、川の優しさと男たちの狂気、この対比がありがちな話をどこにもない話へと変えていきます。
なぜ性格や生活のまったく違う二人が川や鮎という優しげなもののために狂気へと走ろうとするのか、男にしか分からない感情がそこにはあるような気がします。
最後に二人の男がつぶやきます。「川はいいな…」「ええ」と、そこに流れている二人にしか共有できない空気をぜひ感じてみてください。
【紹介者】
エレファントファクトリーコーヒー 畑啓人さん
エレファントファクトリーコーヒー 畑啓人さん
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