劇団四季「春のめざめ」
11月14日(日)まで。京都劇場で公演中
若者たちの魂の叫びを、強烈なロックで!
「若いってすばらしい!」というけれど、若さの真っただ中にいた時は、痛くて切なくてもどかしくて苦しくて、不安ばかりが膨らんでいって、それを癒やすすべも訴える言葉も持っていなかったのではなかっただろうか。『春のめざめ』は、若者のまさにそんな普遍的な姿を、強烈なロックとバラード風の歌でつづっていく作品。1891年に発表された戯曲を、2006年ブロードウェイでミュージカル化され、トニー賞で8部門を独占した話題作である。劇団四季では、2009年の初演以来、大きな反響を呼んでいる。
19世紀末のドイツ。思春期のただ中にいる少年少女たちは、無理解で理不尽な大人たちや学校生活の中で、体の中から沸き起こってくる不可解な感覚に戸惑い、苦悩する。しかし、大人たちは何も答えず、はぐらかすばかり。そんなある日、幼なじみの少女ベンドラと、少年メルヒオールは偶然再会し、思いを確かめるうちに、結ばれてしまう。一方、毎晩“悪夢”に悩まされ、勉強に集中できないモリッツは退学になり、父親にも見放され、行き場を失った彼は…。
時代や若者を取り巻く環境は変わっても、若者の本質は変わっていないと思う。だからこそ、われわれ大人もまた、違和感なく痛みや切なさを共感できる秀作。
(ライター あさかよしこ )