花の武将・前田慶次
9月23日(祝・木)まで。大阪松竹座にて公演中
ブレない男の華麗な潔さが、心地よく伝わる
戦国時代末期。派手な装いと自由な振る舞いで、「戦国一の傾奇者(かぶきもの)」と呼ばれた前田慶次を、現代の歌舞伎役者が演じる。このダブル・カブキが一番の見どころ。
加賀城主・前田利家の義理のおいである慶次(片岡愛之助)は、跡目争いを避けるため、愛馬とお供の捨丸(石井正則)一人だけを連れて諸国を遍歴する傾奇者。その道中、芸人一座の伽耶(佐藤江梨子)や、のちに莫逆(ばくげき)の友となる上杉家の家臣・直江兼続(山崎銀之丞)との出会い。かねてから心を寄せあっていた利家の正室・まつ(賀来千賀子)との戦乱の世ゆえの悲恋。秀吉をはじめ、家康、三成、千利休らとの駆け引きにも、命を賭けて自我を貫き通す武者魂など、「傾き(かぶき)通して死ねるなら本望」とばかりに、戦国の歴史の表と裏を縫うように生き抜く姿から、昨今の日本から消え去ろうとしてる(?)“ブレない男”の潔さが、心地よく伝わってくる。この剛肝にして風流人の慶次を、“ラブリン”の愛称で手堅い人気を得ている片岡愛之助が好演。また、慶次と堅い友情を交わす直江兼続といえば、大河ドラマ『天地人』でもおなじみ、『愛』の文字を掲げた兜(かぶと)の持ち主。つまり、このラブラブ・コンビという設定もまた、粋な計らいなのかも…。
(ライター あさかよしこ )