瞳の奥の秘密
9月25日(土)から京都シネマで公開
時を超えた愛憎の重さ!濃厚なラテン調サスペンス
人は、どれだけ長く一人の人間を愛したり憎んだりできるのだろう。たいていは、時とともにその思いの強さや質が変わっていく、あるいは全くどうでもよくなる。もし、同じテンションで同じ思いを抱き続ければ、狂気の世界に行くしかないのではないだろうか。
本年度アカデミー賞で、最優秀外国語映画賞に輝いたこのアルゼンチン映画は、上質のサスペンスであるとともに、おとなの恋の機微を描いた繊細なラブストーリー。幻を見ているかのような冒頭のシーンから、胸に張り付いてくるエンディングまで、物語の起伏の豊かさと語り口の巧妙さにとらわれる。
刑事裁判所を定年退職したベンハミンは、今も心に引っかかっている25年前の未解決殺人事件をもとに、小説を書こうとしている。かつての上司であり、恋心を抱いていたイレーネに会いに行った彼は、事件にかかわった若き日々を振り返っているうちに…。
サッカー場で容疑者を見つける場面だけは納得いかぬが、ファン・ホセ・カンパネラ監督は細やかな人物描写で、陰影の異なる2組の男女関係を描き切った。いかにもラテン顔のリカルド・ダリンに、実に美しいソレダ・ビジャミルという配役も魅力的だ。12歳未満は保護者同伴が望ましいPG12指定。
(ライター 宮田彩未 )