科学を知れば、もっと料理上手に

科学の技を使って調理にチャレンジ

2面では、1面で紹介した〝科学〟の実践編。
科学の力がそれぞれのレシピの味を支えています。

レシピ提供:京都女子大学栄養クリニック
調理と盛り付け:クッキングインストラクター・大薮真沙美さん


食材の色素変化は、水にさらして抑制を

調理中の色素変化の抑制が必要な素材は、葉物野菜に限ったことではありません。ゴボウ、ジャガイモ、サツマイモ、リンゴ、モモなどを包丁で切ったまま置いておくと、断面が褐色に変化するだけではなく味も悪くなります。これは、食物にフェノール類が含まれているためです。

切ることで組織が破壊されたフェノール類は、酸素に触れ、酵素が作用して茶色のメラニン色素を生成。酸化と呼ばれるこの反応を防ぐには、包丁で切ったらすぐに水にさらすことが重要です。フェノール類も酵素も水溶性。水にさらすと溶け出して酸素との接触がさえぎられ、色素の変化が抑えられます。

さらに抑制させるには加熱が効果的。組織がやわらかくなりフェノール類も酵素も溶け出しやすくなるうえ、酵素が加熱の影響で変性し、作用しなくなるのです。

野菜の煮浸し

水にさらして油であげることで色素の変化を抑制するダブル技。野菜の色がきれいに出ています

材料(3人分)
  • カボチャ…1/8個
  • ナス…1/2本
  • ゴボウ…1/4本
  • レンコン…5〜6cm
  • ニンジン…1/3本
  • サトイモ…3個
  • 長トウガラシ…3〜6本
  • 揚げ油…適量
  • 片栗粉…適量
漬けダレ
  • だし…150ml
  • 薄口しょうゆ…大さじ1/2
  • みりん…大さじ1/2
  • 酒…大さじ1/2
  • 塩…小さじ1/6
  • 酢…大さじ1/2
  • しょうが汁…小さじ1/2
作り方
ポイント
  • カボチャは薄いくし切り、ナスは6等分のくし切りに。ゴボウは皮をこそげ取り、ナスと同じ長さの2mm厚さに切る。レンコンは皮をむき2mm厚さに切る。それぞれ水にさらす
  • ニンジンは皮をむき、2mm厚さの輪切りに
  • サトイモは皮をこそげ取り、ひと口大にカット。ラップをして電子レンジで5〜6分加熱
  • 長トウガラシはヘタ付きのまま、1cm長さの隠し包丁を入れる
  • 漬けダレの酢としょうが汁以外を鍋に入れて煮立たせる。40度くらいに冷ましてから酢としょうが汁を加える
  • ③のサトイモは片栗粉をまぶして揚げる。ほかの野菜は水気をとってから160度の油で素揚げにするポイント
  • 大皿に盛り付け、熱いうちに漬けダレをかける
塩こうじの酵素で肉をやわらかく、グルタミン酸なども生成

1面で、酵素に硬い肉をやわらかくする働きがあることを紹介しましたが、塩こうじも酵素の力が活発。こうじ菌が生産する酵素がたくさん含まれています。そのため、肉を塩こうじに漬けておくだけで肉がやわらかくなるのだそう。

塩こうじ菌の働きは、タンパク質の分解だけにとどまりません。糖類、アミノ酸、特にうま味成分のグルタミン酸を作り、乳酸菌の働きによる味も加わり、さらにおいしくなります。乳酸菌や酵母などの微生物の働きで豊富なビタミンも生成され、代謝を促進したり、疲労回復の効果なども期待できるそうですよ。

豚肉の塩麹漬け

編集部でこちらの〝塩麹に漬けて焼いた肉〟と〝漬けずに焼いた肉〟を同じ条件で調理して食べ比べ。すると、「塩こうじ漬けの方がやわらかい」の声が圧倒的に多いという結果に!

材料(4人分)
  • 豚肩ロース肉(ブロック)…400g
  • ニンニク…1片
  • 塩こうじ…40g
  • ※豚肉の分量の10%
  • こしょう…適量
  • フリルレタス、ミニトマト…適量
作り方
ポイント

手前の白っぽい方が塩こうじ漬けにした肉、奥はニンニクとこしょうのみの塩こうじに漬けていない肉 

  • 肉表面の水分をふき取り、全体にフォークで穴をあける。全面に塩こうじを塗り、薄切りにしたニンニクを張りつけ、コショウをふる。空気を抜きながらラップでしっかりと包み、冷蔵庫で2日間おく
  • ラップを外して約3mm厚さに切る。こうじを付けたままフッ素樹脂加工のフライパンで弱火で加熱。中まで火を通してから、中火で焼き色を付けて出来上がり(焦げやすいので注意)
熱とタンパク質の関係を利用、熱した網上で瞬間熱凝固

タンパク質は金属と強く結合する性質を持っていますが、タンパク質同士の熱凝固を起こすことで金属との結合が抑えられます。魚を焼くとき、グリルや焼き網を先に熱しますよね。これは、熱した焼き網に魚を乗せた瞬間に、タンパク質同士が熱凝固をしているのです。焼き網に酢を塗ると、酢の持つタンパク質凝固作用の働きが加わり、より効果的です。

身崩れを防ぐには、こんな方法も。

「焼く前に、魚に重さの1~3%の塩をふって15~30分ほど置いておきます。さっと表面を洗ってから水気を取り、加熱を。塩の作用で、筋原繊維タンパク質が変性し、アクトミオシンという分子が大きく、網目状のタンパク質に変化します。いわゆる身がしまった状態になり身崩れを防ぎます」(木戸さん)

サンマのピリ辛焼き

サンマは、皮が破れることなくおいしそうな焼き目がついています

材料(2人分)
  • サンマ…2匹
  • モヤシ…100g
  • 塩…ひとつまみ
  • 水…大さじ2
  • ニラ…1/5束
  • すりごま(白)…大さじ1/2
タレ
  • ネギ(みじん切り)…適量
  • 濃い口しょうゆ…大さじ1と1/2
  • しょうが汁…大さじ1/2
  • 酒…大さじ1
  • ごま油…大さじ1/2
  • 粉唐辛子…適量
作り方
ポイント
  • サンマは頭と内臓を取り除き、洗って水気をふき取り、斜め半分に切る
  • タレの材料を合わせ、①を漬けて20~30分置く
  • ニラは3cm長さに切る。フライパンにモヤシと、分量の塩と水を入れてふたをし、2〜3分後にニラを入れて水気を飛ばし、すりごまをかける
  • 熱しておいたグリルで②を両面焼き、③と一緒に盛り付ける

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