祇園祭を楽しむキーワードは「復活」

後祭の復活・復興への“心意気”も見届けて

今年の祇園祭を、感慨深く迎える人々がいます。
復活・復興に関わってきたみなさんに、今の思いや、見どころを聞きました。

趣と楽しみをつくり出していきたい/後祭十ケ町打ち合わせ会

後祭の各山鉾の朱印を集めると、今年限定の復活記念特製手ぬぐい(500円)がプレゼントされます。先着3500人。引き渡しは7月23日(水)の午後9時まで

「後祭は、にぎやかな前祭と異なり、静かなお祭りという印象でした」と、子どものころの思い出を話す「黒主山保存会」前理事長の大田正樹さん。大田さんは、後祭を構成する山鉾町で結成された「後祭十ケ町打ち合わせ会」の担当理事も務めています。

「後祭は曳山(ひきやま)や舁山(かきやま)などの山が多く、地味に思われがち。昨年までの合同巡行では、私たちの順番になると観覧席がガラガラだったことも。そんな状況もあり、分離となると『人出が少なくなるのでは?』と心配する声もありました」

そこで同会では、後祭ならではの趣や楽しみをつくり出すべく協議。「後祭の山鉾も、ぜいを凝らした意匠のものが多く、見応えがあるんですよ。ぜひゆっくりと見て回ってください」

「後祭十ケ町打ち合わせ会」担当理事・大田正樹さん

7月21日(祝・月)〜23日(水)には、各山鉾の朱印を集める「後祭十ケ町ご利益巡り」が実施されます(午後1時から9時まで)。同期間中、山鉾の解説スタッフの配置もあるとのこと。

「今年は、後祭の心意気の見せどころ! 誇りを持って後祭に取り組んできた先人たちにも、いい報告ができるような祭りにしていきたいです」

人とのつながりが大きな力に/四条町大船鉾保存会

本番に向け、練習に取り組むはやし方のメンバー。「テンポの変わる市役所前、河原町四条、四条新町が巡行当日の〝聴きどころ〟です」(吉井さん)

1864年の焼失から150年。かつて後祭の最後尾を飾っていた「大船鉾」が復興され、巡行に復活します。

「ようやく、ここまでたどり着いた。 “感無量”の一言に尽きます」と、「四条町大船鉾保存会」理事長・松居米三さん。 実現には「“人とのつながり”が大きな力となった」と言います。

鉾本体の部品のいくつかは、「菊水鉾」「黒主山」をはじめ、京都市の団体などが寄贈。「歴史にのこる仕事をさせてもらえる」と、材料費のみで協力する職人もいたのだそうです。

「四条町大船鉾保存会」理事長・松居米三さん

また、公募で集まったはやし方メンバーの多くは、保存会の役員としても活動。「若い世代が町外からも集まり、町衆の減少や高齢化といった復興への課題を解消してくれました」

はやし方代表の吉井さんは「山鉾町外で生まれ育ったメンバーにとって、はやし方は憧れの存在。そろいの浴衣を着て、演奏するだけで満足と思っていましたが、まさか鉾に乗って演奏できるとは。メンバーからは『思いがかなった』との声も。巡行当日は、恥ずかしくないおはやしを披露したい」。

松居さんが「人の“和”の結晶」と言う大船鉾の巡行が楽しみですね。

伝統に新たな息吹を!学生たちの熱意が彩る大船鉾

「伝統に向き合い、ときには厳しい要望にも応えていくうち、作品がどんどんレベルアップ。学生のがんばりと成長にも感動しました」(左/吉田さん)。「祇園祭で、自分の作品の晴れ姿を見るのが楽しみです!」(西田さん)

こちらの大船鉾の裾帯や、音頭取りの衣装を学生たちがデザイン。巡行当日をお楽しみに!

躍動感あふれる曲線、力強く大胆な直線ー。大船鉾の裾幕と音頭取りの衣装をデザイン・制作したのは京都市立芸術大学の学生たちです。授業の一環として、学生8人が手がけました。

担当教員の吉田雅子さんによると「文献の記録では、色は白に紺、デザインは青海波という文様が基本。伝統を尊重しながらも、〝今に生きる〟デザインを課題としました」とのこと。

「動いたときや遠目にも見映えするよう配慮。大船鉾のみなさんの意見も聞き、改良を重ねていきました」と、衣装を担当した西田千紗さん。

その結果、「素晴らしいものを作ってもらった」と喜ばれたそう。

「多くの人とさまざまな技術によって伝統がつながっていると実感。そのつながりに関われたことに、感動と喜びでいっぱいです」(西田さん)

「鷹山の歴史と未来を語る会」/目指すは、2026年の復興です

「鷹山」の居祭で飾られる3体のご神体。「今後はオリジナルグッズやイベントなども考案し、復興への足がかりにしていきたいですね」(山田さん)。居祭は7月22日(火)・23日(水)

「鷹山」は1826年の災害で大部分を破損して以来、〝休み山〟として、残された懸装品を飾る「居祭(いまつり)」を継承しています。

「幼な心に『うちの町には、なんで山鉾がないんや』と。山鉾のはやし方はみんなのヒーローでしたから(笑)」

そう話す山田純司さんは、復興を目指す町内外の有志と「鷹山の歴史と未来を語る会」を結成。2年前から勉強会やおはやしの復活などに取り組み、今年の祇園祭でははやし方の公開練習会と笛の奏者・藤舎名生(とうしゃめいしょう)さんの演奏会を行うことに。

「町内のマンション住民の方や、専門学校の生徒さん、近隣の町の方、ほかの山鉾の方々、行政や市民…。みなさんのお力をお借りできたらありがたいです」

焼失から200年後の2026年を復興の目安に、という山田さん。「環境が整えば、早まる可能性も。今年はスタートラインに立ったところです」

公開練習会は7月15日(火)午後7時〜。「ちおん舎」(中京区衣棚通三条上ル)にて。見学料は1000円。申し込みは山田さんまで、メール()にて。先着50人。

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