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読者が推薦!私の街の“いい女”

いろんな人、いろんな取り組みが動いています
京都の木々を守る

緑に対するギモン

「木を守ることは大切」。それはわかっていても、それ以上詳しいことって意外と知らないのでは? 今回取材した人たちから、“キホン”を教わりました。

昨年の夏、大文字山の「ナラ枯れ」の被害が話題になりました。なぜあんなことが起こったの?

昨年のナラ枯れの様子(提供/京都市)

「ナラ枯れとは、『カシノナガキクイムシ』という虫が運ぶ菌によって起こる病気。繁殖のために虫が木に入り、菌が増え、水の上昇が止まり、木が枯れるのです。昨年は倒木の被害もありました。

人が山に入り、木をまきなどに利用していたころは、ナラ枯れの木がそのまま放置されず、被害の拡大が防止されていたのです。文献によると、ナラ枯れは江戸時代の古文書にも記載があったとのこと。昨今のように、ナラ枯れの規模が拡大したのは、山に人の手が入らず、虫が広がっていったことが一つの原因といえます」(森林総合研究所 関西支所・鳥居厚志さん)
林業が活性化しすぎたら、森から木がなくなってしまうのでは!?
「日本は森林資源が豊富です。にもかかわらず、これまでは海外から木材を大量に輸入していました。もし仮に、海外から輸入している分をすべて国産材でまかなったとしても、はげ山になる心配はないくらいの本数は十分あります」(ヒバナ・松田直子さん)

「林業は、木を伐採することだけを意味しているのではありません。木を使いながら育てるというふうに、循環させるのが大切です」(京都府農林水産部林務課)
木を植えて、木材として使えるようになるまでにどれくらいかかるの?
「木の種類にもよりますが、大体30~50年くらい。ちなみに、京都府内の森林のうち約7割は、45年以上前に植えられたもので、いま〝収穫の時期〟を迎えています。こうした木を伐採し、新たに植林することで、炭酸ガス(CO₂)の吸収が進みます。だから、林業従事者を増やし、効率的な方法で収穫する仕組みづくりをしていくことが緊急課題なのです」(京都府農林水産部林務課)

木質ペレットとは、間伐材やおがくずを粉にして、高温で圧縮して作る燃料。石油に代わるクリーンなエネルギーとして注目されています。


この木質ペレットを燃やして使うのが「ペレットストーブ」。今年の3月、京都市が東北の被災地にペレットストーブを寄付したことでも、注目を浴びました。

「ペレットストーブは、電力を必要としないものもあって、防災面でも強いんですよ」と、松田直子さん。

松田さんは、5年前に、木質ペレットやまき、炭など、木の燃料を普及させるための提案を行う会社「ヒバナ」を設立。昨年には一般の人がペレットストーブを実際に見たりできる「ヒノコ」(寺町通二条下ル)というお店もオープンさせました。

ところで、ペレットストーブって、設置の際に自宅に煙突をつけたり、工事が大変というイメージがあるのですが…。

「煙突が必要なのは、まきストーブ。ペレットストーブを自宅に設置する場合、配管工事の仕方はエアコンやガスストーブに似ています」と松田さん。マンションでの設置もできるそうです。

「こんなふうに、上からペレットを入れて使います」と松田さん。ちなみに、向かって左隣にいる“ブタくん”は、ペレットと電気で動くバーベキュー用のグリルです


先進的な取り組みも

松田さんによると、京都市は木質ペレットの普及に熱心だそう。

「ペレットストーブの購入以外に、ペレットボイラーに対しても助成が出る自治体は珍しいです(下記参照)」。他府県から「先進的な事例が見られる」と、視察に来る人も少なくないそう。


「京都では、ペレットバーナーで焼き上げるパン屋さんや、ペレットストーブを置いている紅茶屋さんなど、飲食店での浸透率が高い。街なかで使われているのが珍しいと言われます。このほか、ペレットボイラーを利用している病院や、『ペレット冷暖房』を使っている小学校もあります。これは日本が誇る技術なんですよ。しかも、小学校で使われているのは京都だけ!」

こうした動きが、林業の活性化や温暖化の防止に結びついていくのかも! わくわくしてきますね。

行政発 木を守る仕組み

新しい話題や、生活に密着した話題を中心にピックアップしました。

来年春、府立の「林業大学校」が誕生!
林業についての知識を、実技と座学の両面から教える学校をつくり、林業の後継者や森林ボランティアを育てよう―。こうした目的から、京都府では「京都府立林業大学校」(京丹波町)の準備を進めています。

同校には、林業の仕事に就きたい高卒以上の人が2年間かけて学べる「森林林業科」のほか、森林ボランティアをしている人、鳥獣害の対策に悩んでいる人、教養として木の文化について知りたい人などが、それぞれ学べる短期のコースもあります。林業の学校は、同校以外にも全国に4つありますが、このようにさまざまなニーズに対応した学校は初めてだそう。

「森林林業科」についての情報は、6月下旬から府のホームページで公開予定。そのほかの短期コースについては、来年春ごろ告知予定です。
林務課=TEL:075(414)5015。
http://www.pref.kyoto.jp/

木質ペレットストーブやボイラーに購入助成
京都市内にある住居や店舗でペレットストーブを購入する場合、工事費を含む経費の3分の1、最大20万円の助成が出ます(助成予定台数は20台)。ペレットボイラーの購入助成もあり。

詳しくは、京都市内の各区役所や、市役所庁舎案内所(本庁舎・北庁舎)で配布されているチラシを参照。
京都市産業観光局農林振興室林業振興課=TEL:075(222)3346=や、京都市のホームページでも確認できます。
http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/soshiki/7-4-0-0-0_37.html

京都府産の木で家を建てよう
「京都府産」と認定された木(ウッドマイレージCO₂認証木材)を使って、京都府内にある自宅または店・施設の新築や増改築を行うと、工務店側が最大20万円の助成を受けられる「ウッドマイレージCO₂認証制度」。「地元産の木を地元で使うことで、森林の荒廃を防ぎ、木の輸送にかかるCO₂も削減しよう」といった目的で、平成16年から始まりました。

助成の対象となる木材を扱う工務店(緑の工務店)は、NPO法人「京都府地球温暖化防止センター」のホームページでわかります(http://www.kcfca.or.jp/wood/)。現在、京都府内で250店以上あるそうです。

資源ごみの再利用計画の中でも、木を重視
今年の3月に京都市が策定した「京都市バイオマスGO!GO!プラン~京都市バイオマス活用推進計画2011―2020」。京都市内におけるバイオマスの利用率を、現状の39%から、2020年度までに55%に引き上げようというものです。

ちなみに、バイオマスとは、動植物から生まれた再生可能な有機性資源のこと。生ごみや紙のごみ、落ち葉や木製の家具、使用済みの食用油、そして「森林バイオマス」と呼ばれる間伐材や林地残材などをいいます。これらを有効活用し、環境への負荷を減らそうというのです。

「バイオマスの中には、木に関係するものが多いです。紙の原料も木ですしね。そのため、このプランの中でも、京都市における森林の保全と林業の活性化は重要視されています」と京都市循環企画課の堀寛明さん。

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