日本庭園の楽しみ方

2026年5月22日 

リビング編集部

新緑がきれいな季節は、日本庭園に出かけませんか。庭師に見どころや楽しみ方を聞き、庭園初心者の記者が実際に鑑賞してきました。

撮影/鈴木誠一ほか イラスト/オカモトチアキ

各時代の日本庭園が残る〝庭園都市〟

京都市は庭園が多いエリア。「〝庭園都市〟と呼ばれるほどです」と、「植彌(うえや)加藤造園」の代表取締役社長・加藤友規さん。

「日本庭園にはさまざまな様式があり、造られた時代の生活や文化に影響を受けています。京都市には鎌倉〜江戸時代、近代と各時代の特徴を持つ日本庭園が残っているので、見比べてみるとおもしろいですよ」

池泉回遊式庭園

「造形的な様式として挙げられるのが、『池泉(ちせん)回遊式庭園』です。文字通り、池の周りを巡って鑑賞できます」

散策することを想定して造られているため、「歩くにつれて景色が変化するように設計されています。池と木々、木々と建物など絵になる景色があちこちに。季節の草花もたくさん植えられており、四季によっても大きく表情が変わります」と加藤さん。

園内には「築山(※1)」や「流れ(※2)」、橋なども点在。当時、広い敷地を持ち、大規模な治水工事ができるのは権力者の証しだったそう。また、庭園は大名や文化人などの社交場だったので、池では船遊びも。茶屋もあり、茶事や宴が行われていました。

「庭の中に、和漢の文学や歴史に登場する風景が再現されている場合も。上流階級の人々が親しんでいた文化を感じることができますよ」

(※1)人工的に造られた小高い山状の地形
(※2)水の流れる場所

行ってみました 渉成園(下京区)

13カ所の見どころがあり四季ごとに花も見ごろに
東本願寺の飛地境内である「渉成園」も池泉回遊式庭園です。園内には、〝十三景〟と称される13カ所のスポットが。
園路を進むと、池に浮かぶ小島、青紅葉と回棹廊(かいとうろう)の共演など、写真に収めたくなる景色が次々に現れました。上の写真は、園内図の該当位置から撮ったもの。取材時の4月は桜のシーズンが終わったところでしたが、ツツジ、キキョウと花が咲いていて、いつ見ても園内のどこかで季節の花が楽しめるよう造られていることがわかりました。

園内図のAの位置から撮影した「印月池」。水面に月の影を映すことからこの名前が付いたそう
Bの位置から眺めた「回棹廊」。初夏は新緑が美しく、秋は紅葉との共演も
よりプライベートなおもてなし空間として建てられた「滴翠軒(てきすいけん)」。こちらはCからの景色

公園内に造られた日本庭園なら、気軽に立ち寄りやすいですね。市内で見ることのできる池泉回遊式庭園をピックアップしました 
梅小路公園(下京区) 円山公園(東山区)

枯れ山水庭園

「『枯れ山水庭園』の特徴は、水が使われていないこと。砂利や砂を川や海に見立てて、景石、コケ、樹木で景観を造っています」(加藤さん)

これは主に禅宗寺院で見られる形式。禅宗が広まった後、禅の思想・世界観の影響を受けて造られました。鑑賞するときは、屋内から座って眺めて。

「目に見える物質的な豊かさから離れ、〝自らと向き合う〟という、禅の思想が反映されています」

砂紋で水の流れや波の立ちかたを表し、景石は島を表すこともあるといった、最低限知っておきたい知識はありますが、「庭を見てどんな景色を想像するかは人それぞれ。でも、それでいいんです。正解がなく、自由に解釈できるのが魅力でもあります」。

行ってみました 南禅寺(左京区)

東山の景観を取り入れた方丈庭園
南禅寺の大方丈から見える枯れ山水庭園。縁側に座ると、目線の位置に白い砂利が池のように広がります。
コケの上に連なる景石は「虎の子渡し」と呼ばれ、虎の親子に見立てたものだそう。塀の向こう側には東山が。庭の植栽と一続きになっているように感じられ、広々とした庭園があるように見えました。眺めていると、日ごろの雑念も晴れていきました。

大方丈の縁側から眺めた方丈庭園。東山を借景として取り入れています
庭園の東側には大小さまざまな景石が据えられています。そこから何を想像するかは自分次第
白砂に砂紋が引かれ、水が表現されています

露地庭園

茶道文化が根付く京都でよく見られるのが「露地庭園」です。

「露地とは、茶室へ向かう道中の庭園のこと。室町時代、茶道の広まりとともに生まれました」

露地は「市中の山居(しちゅうのさんきょ)」という茶の湯の精神に基づいて造られているそう。街なかにいながら、山の中にいるような自然の豊かさや静けさを味わえます。

「茶室は精神的なつながりや豊かさを得る特別な空間です。そのため、中に入る前に身を清め、心を落ち着かせる必要がありました」

庭の入口には手を洗うつくばい(手水鉢)が置かれ、茶室に向かう園路には石灯ろうや飛び石が。

「歩を進めるごとに俗世から離れ、非日常の世界に入っていく。その過程が視覚的にも表現されています」

行ってみました 對龍(たいりゅう)山荘(左京区)

清流が流れるりんとした空気が漂っています
明治時代に造営された別荘「對龍山荘」。池泉回遊式庭園に面した建物の一角に茶室があり、そこに続く露地庭園を見ることができます。
観光客などで人通りが多い岡崎エリアにも関わらず園内はとても静か。イキイキと緑が茂る池付近の優雅な雰囲気に対して、露地はりんとした空気が漂っています。露地内に「流れ」があるのも珍しいそう。飛び石の上を歩くと、歩幅や足運びを意識するため、自然と歩くスピードがゆっくりに。茶室に向かう数メートルの間に呼吸が整うような心地でした。

飛び石の先には茶室が。写真左には「流れ」が配され、まるで上流に向かって山を登っているみたい
茶室の周囲には立派なハゼの木も。山の中にいるような静けさに包まれています

植彌加藤造園
代表取締役社長
加藤友規さん

日本庭園には地域性も現れます。昔は遠方から石材などを運ぶことができなかったので、基本的にはその地域で採れた素材を使用していました。そのため、同じ枯れ山水庭園でも、地質によって砂利や岩の色、全体の雰囲気が異なります。また、近代になると京都市は琵琶湖疏水によって水源インフラの質が向上。貯め池や井戸ではなく、水を引き、清流を生かした庭が作られるようになりました。

私たちが庭の管理を行う際は、時代背景や作庭意図を踏まえ、庭の個性を育むことを心がけています。日本庭園を通じて、時代の風を感じてもらえたらうれしいですね。歴史に詳しくないという場合も、各園のパンフレットにある解説を読むとわかりやすいですよ。さまざまな庭園を見ていくと、好みのものが見つかると思います

(2026年5月23日号より)